6.
 
              「ん…んあっ?うー!!」
 
              息苦しさに目を開けたら、唇を塞ぐ不埒モノがいた。
 
              白く霞む室内は、人工の光りでなく本物の陽光が眩しいくらいに降り注ぐからで、
 
              昨夜はあのまま寝入ったらしいことを自覚できる。
 
              しかし、目覚めても同じ状況って悪夢?いや、悪魔?
 
              行動と結果まで再現してるんじゃ、あたしも学習機能がないってもんだわ。
 
              不意打ちに叫びを上げようとして、易々と舌の侵入を許してしまった。
 
              殴ろうにも両手は拘束、体は布団と近衛氏に挟まれてびくともしやしない。
 
              負けるか!
 
              「っ!ひどな、早希」
 
              反撃にむかつく舌を噛んでやった。
 
              空々しく口を押さえんじゃないわよ!あんた目が笑ってんじゃないよ。
 
              「…なにしてらっしゃるんですか、近衛さん」
 
              自由を取り戻したんだから、一発お見舞いしたいところだけど寝起きに快感注ぎ込
 
              まれて指の先まで痺れてる。
 
              「昨夜の続きですよ、風間さん」
 
              悪びれずに言った悪魔は、頬に一つキスをおとした。
 
              いらんわ、そんなもん!
 
              「フルコース堪能しといてまだ足りないっての?」
 
              「デザートにいく前に眠り込んだ人がいるんでね」
 
              「寝てない!気絶!食あたりで死ね!」
 
              間違ってました、昨夜のあたしの決断は大間違いです。神様お願い、やり直させて!
 
              婉然と微笑む近衛氏が、色っぽいやらバカっぽいやら。
 
              …一番バカはあたしかぁ、だってさ、こんな人に見えなかったんだよ。余裕がある
 
              っての?隣で裸の女が寝てても平然としてられるような大人と言うよりストイック
 
              な人だと思ってたんだい。
 
              キスを許しても、タイミングが合わなきゃ迫ってくることはないと踏んでたのにな。
 
              「近衛氏さ、あたしなんかと、その…したい?」
 
              一瞬の間、そんで起こる爆笑。
 
              噴き出すとこ?人が赤面しながら聞いてるってのに、腹抱えて倒れるか、普通?
 
              「なにがそんなにおかしいかな?!悪かったわよ、質問して、忘れて」
 
              「忘れないよ、おかしな質問だけど」
 
              照れ隠しに布団に潜り込んだのに、その上からボディープレスをかけられて息苦し
 
              さに顔を出した。
 
              狙いすました悪魔に、頬をやんわり押さえ込まれたらもう、逃げ道はない。
 
              目尻に爆笑の余韻を残して、近衛氏は身の危険を感じる視線であたしを捕らえると
 
              掠れた声で宣言した。
 
              「するよ」
 
              なにを?って聞くのは愚問なんだろうな。そもそもこっちが話題を振ったんだし。
 
              「僕が一生、早希を綺麗なままでとっておくとでも思ってた?」
 
              「…わりと」
 
              冗談で迫られることはあった。昨夜だっていつかは…と考えもした。
 
              でもさ、引き下がるのも早いじゃない?新婚初夜もサラッと流してくれたし、無理
 
              な要求を通すこともない。うまくいけばジジババになるまで、逃げおおせるかと。
 
              「近衛氏は飢えてないって言うか、同じベッドで寝てても貞操の危機は感じないっ
 
               て言うか…あんまそういう相手として認識できないんだよね」
 
              正直者はバカを見る…すっごい睨んでるんですけど、この人!
 
              「それは…僕に男を感じないってコト?」
 
              返答次第では絞め殺されるんじゃないかと思うと、迂闊なことは言えません。
 
              なのに!嘘をつけないあたしの口ってば!
 
              「正確には、性的欲求の乏しい男に見える、かな?」
 
              口先だけ、実際に行動は起こさないから安心していいよオーラが漂ってるんですよ、
 
              あなたは。
 
              「…ふーん。それであのバカな質問につながるわけだ」
 
              言っちゃいました…薄々感じていたことを口に出してしまいました…。
 
              だってほら、付き合ってる時も(?)全然ムードないしさ、やばそうな場面になっ
 
              たこともあったけど、リベンジ無しでしょ?されても困るけど…。
 
              昨夜だってその前だって、機会はいくらでもあったのに放置じゃない?構われても
 
              困るけど…って何あたし、襲ってほしいの?!
 
              …虚しぞ一人突っ込み。現実を見ろ、怒ってるぞ近衛氏!
 
              「種族維持本能って知ってる?」
 
              にこやかな質問は、ビミョウに際どい。
 
              「…子孫を残すためにある奴ですね…?」
 
              へらっと笑ってみたが、挟まれた頬により一層圧力が加わっただけだった。
 
              真面目に聞けってわけね、はいはい。
 
              「僕が人畜無害に見えたのは、いきなり結婚を迫られた早希を怯えさせないためで
 
               ショ?まぁ、女性にさして興味がなかったのもあるけど、自分の選んだ結婚相手
 
               を抱きたいと思わない男がいるの?」
 
              「世の中広いですから、一人くらいは」
 
              あああ!!またやっちまいました!ボケずにいることはできないのか、この口は。
 
              「早希は…即決即断即実行の人だったね」
 
              すいません、その質問どこにつながるんで…?
 
              訝しんだ視線は、近衛氏の行動によって答えをもらうという、ありがたくない結果
 
              になるわけだ。
 
              「今日は学校、休みなさいね」
 
              唇を塞ぎながら、なんて恐ろしいことを言うんでしょう。
 
              あの、もしかして、やばい?
 
 
BACK  NOVELTOP     NEXT…
 
 
 
                  これ以上はこっちじゃ無理です。 
                  続きはすっ飛ばしてその後って形で。         
 
 
 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送