7.「実はね」みる&静



やっともぎ取った外出デート、すっごく楽しみにしてたのに。
「ねえ、その格好で行くの?」
玄関で出迎えた彼は、私を見るなり笑顔を引っ込めた。
「…どこか、変ですか?」
眉をひそめるほどの服を選んだとは思えないのだけど。
胸元、開いてないわよね。スカート、短すぎないし。ちゃんと流行りのモノだし。
訝しんで己を見下ろしていた耳に届く小さな吐息に、むっとして睨み上げると意外に真剣な目をした静くんがいた。
「制服姿しか見たことなかったからな、大誤算だ」
そうして独り言みたいに呟くと、せっかく履いていたブーツをはぎ取るように脱がせていく。
「ちょ、ちょっと何するんですか!」
約束した日から一週間、雑誌を見たり学校帰りにショップを物色したりして一生懸命コーディネートしたのよ?
格好いい静くんと並んでも、見劣りしないよう細心の注意を払ったっていうのに。
「出かけられなくなっちゃう、やめて〜!」
しかし願いは虚しく、情けなく上がりかまちに座り込んだ姿で不機嫌な彼を見上げているのが現状。
一体、なんなの?!
「立って、部屋に行くよ」
「いや!」
命令される覚えはないんだから。訳もわからずのこの扱いに、怒っているのは私の方なの!
「そう」
けれどこっちのことなど全く気にとめない彼は、軽々と私を抱き上げるとずんずん2階へ歩いていってしまう。
「約束しましたよね?!嘘つくなんてひどいです、映画〜!!」
「…制服に着替えてくれるなら、出かけてもいいよ」
「どうして?!」
乱暴にベッドに落とした上にのし掛かって、唇が触れるほど近くで笑った静くんはふわりと降ろしていた髪をすいた。
「メガネがない、髪も降ろしてる、見える鎖骨にそそられて、いつもより短いスカートから覗く膝に欲情する」
「はい?!」
「映画館のトイレで致されたいなら、そのまま行く?」
………どうにかしてくれないかしら、この人。
家で会うと必ず襲われるから外デートを希望したのに、結局同じオチなの。
「じゃあ、一度したらこの格好でもデートしてくれるんですね?」
キスで誤魔化されないようぎゅっと頬を押さえてから聞くと、微笑んだ静くんは無理だねと口角を上げる。
覚悟したって言うのに、どうして?
「他の男に君を見せるのがイヤなんだ。それに、こうして…」
痛いほど吸い付かれた首筋は、明らかに人目につく場所。今日の服じゃ隠れない、ううん、制服でも隠せない。
「印を付けたら、人前に出るの、恥ずかしいでしょ?」
「…サイテー」
こうなってしまった静くんは、もう何も聞いてくれないのよ。
諦めよう。今度は絶対ジーンズで、分厚いセーターでも着たらこんな目には合わないわ、きっと。
抵抗をやめて力を抜くと、やがてさらわれる快楽の波。
「実は、すごかったんだねぇ、君は」
十二分に翻弄された頃漏らされた呟きの、意味なんて問う理性はない。


NOVEL

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送