24.「うわー、フォローできない…」花&薫+アスカ&青


例え日本で一番のセールスをあげているアーティストでも、ここでは一番の下っ端。
最弱なのである。
「あ〜青くん、これ俺のライブのチケット…」
「いらない、行かないから」
「や、あの、そう言わず。今回は花のために5曲書き下ろしてて、その、俺の愛情ってのかな、それ見せられるなって」
「見たくないし、聞きたくもないね」
揉み手摺り手で下手に出ても、にべもない対応に変化があるわけではない。
10近く年下の義弟に10年以上邪険に扱われている薫は、チラリと見もせずコーヒーを啜る綺麗な横顔に小さく溜息を ついた。
お茶を持ってキッチンから出てきたそれぞれの伴侶も、一部始終を見て呆れることしきり。
「変わらないね、あの人達」
「ええ。青くんも普段こっちが恐くなるくらい冷静で理性的なくせに、薫さんに対してだけは子供みたいに感情剥き出し になるのよ、昔から」
「こう何年も対立の構図を見せられちゃうと、さすがに薫さんが可哀相になっちゃう」
「ねえ?私が許しているんだもの、もういいと思わない?」
声をひそめていつまでも進歩のない彼等を批評する。
原因となった大昔の薫の所行は許し難いのかも知れないが、本人達がよいのであれば傍で口を出すことではない。
ただ、そう簡単に割り切れないのが弟心…いや、青心なのだろう。折れるつもりは一向にないようで、寄ると触ると 悪口雑言の限りを尽くして薫をいじめているのだから。
緑と2人して。
「しょうがないな」
やれやれとパイプ役なることを買って出たのは、アスカ。
「ごめんね、よろしく」
期待半分、諦め半分でそれを見送ったのは、花。
「すっごーい、薫さんのライブ?!前から3列目なんて、めちゃめちゃいい席だ〜」
無邪気を装って剣呑な男共を割って入り、チケットを覗き込むと行きたい行きたいと、青に向かってお決まりの駄々を こねる。
「ね?青くん、行こうよう〜。それとも、クラスの子、誘っていい?」
「…ダメ」
「じゃあ、連れてって?お願い」
未だかつて、彼がこの攻撃に勝利できたことがあっただろうか?
そんなもの、有るわけ無い。無いから勝利は確定なのに。
「いや、嬉しいなそんなに喜ばれると。いくらでもチケット送るから、何度でも来てよ。クラスの子もじゃんじゃん 連れてきて。そうだ、いっそのこと俺が迎えに行こうか…」
「死ね、いっぺんといわず何度でも死にくされ」
片桐薫という男は、とにかく迂闊なのだ。
花との出会い然り、秋の件然り、何年経っても義兄弟と和解できないこと然り。
おおよそ世間一般に知られているクールとか物静かと言うイメージの真逆を行く、自滅型生物なんである。
故に、余計な好意からうっかり口を滑らせ青から執拗な暴力を受けるハメになるわけで。
「「うわー、フォローできない…」」
女性陣が頭を抱えたのも無理からぬ事。
「青くん!明日テレビ録画あるから顔は勘弁して!!」
「ほう、余裕だねえ、スター様は。そんな心配できるなんて」
これ、この通り。


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