20.「邪魔するな!」花&薫


スタジオで缶詰なんて冗談じゃない。
少しでも花の顔が見たくて禁断症状が襲うから、必要もないギターを届けてくれるよう頼んだのがまずかった。
「へぇ、片桐君の友人?」
「可愛いよねぇ」
「いくつなの?」
「あの、カレシいますか?」
なんで、秋を連れてないんだ。
花みたいに若くてキレイで可愛いのがこんな飢えたオオカミの群れに1人突っ込んでくるなんて、無謀に決まってんだろ?!
しかも俺に気を使ってんだかなんだか、大事な質問を笑顔で誤魔化してやがる。
言えよ、俺のもんだって。付き合うどころか結婚までしてる、立派な人妻だって宣言しろって。
…できるわけ、ないんだよな。口外しないって約束で事務所に認めさせてんだから。
ギラついたオス共に囲まれてうっとうしいだろうに、それでも微笑みを絶やさない優しい女が自分のモノだと主張出来ないことが辛い。
こいつらが思い描くほど俺はクールでも女扱いに長けてることもない、ただ恋に溺れる憐れな男なんだ。
いつか誰にも何も言わせないくらい花を守れる男になるんだと誓って、取りあえず今できる唯一のことをしよう。
「花、こっちこいよ」
群がるバカ共を迂回してドアに移動した俺は大事な彼女を呼ぶ。
「あ〜ずるいっすよ!片桐さん」
「おいおい、独り占めすんなよ」
「紹介してくれよ」
なんて図々しい奴らなんだ、いい加減にしやがれ。
「邪魔すんな!」
これ以上ほんのちょっとでも花を共有なんてできるか。
強引に肩を抱き、不機嫌に部屋を後にする俺を笑っていいのは腕の中の彼女だけ。


NOVEL

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