2.「それは無理な相談です」 みる&静


さっきから頬に刺さる視線の主には極力注意を払わないようにしていたけど、もう限界。
「何なんですか、一体」
じりじり距離を詰め、とうとう内緒話ができるほど近くにいた人から飛び退いた。
「行っちゃうの?」
「行っちゃいますよ」
残念、と綻ぶ顔に邪気はないけれど、行動には絶対邪な何かがある。
だって問題集と格闘する私を見る目はとても楽しそうだったもん。
警戒していると思わず見とれずにおれない綺麗な顔に、ゾクゾクするような色気が宿って、
「僕といてしたくならない女の子って、新鮮だな」
………どうして、こんな男が好きなんだろう。今からでも遅くない、まっとうな相手を探してみようか。
にじんだ後悔と疲労を読み取って、笑みは更に深くなる。からかう陽気さが消え、狡猾な黒さに、ニヤリと。
「ふふふ、世間知らず。この腕から逃げられると思うその甘さが、好きだよ」
真顔でこんなセリフを、クラスの男の子辺りが吐いたら笑い飛ばしてやるんだから。
ダケド、ダケド。
抵抗するまもなく引き寄せられ、苦しいくらいに抱きしめられたその胸の中、耳朶に直接吹き込まれる声を否定することはできない。
悲しいほどあなたが好きな私は、揶揄することもできないほどこの恋に溺れているから。
「ねえ、勉強するならこっちにしない?」
強引に落とされるキスが、勉強?
だとしたら、この問題の答えはどこにあるの?…わからない。
「…それは、無理です。キリがないもの」
あなたから離れるのは、自分の心にも逆らうことで、辛いけれど。
「暇、だったんですね?」
曖昧な表情が真実だと白状していた。
きっとそんなことだと思ったのよ。隙を見つけては私をからかって遊ぶ、それが趣味なんでしょ?
「ちょっとは大人しくしていて下さい」
「つれないね、君は」
睨み付けても少しも動じることないあなたを、いつか慌てさせてやるのが目標よ。

NOVEL

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