16.「それは嘘ね」みる&静


腕の中の彼女は初めて抱いたあの日からどんどん愛しさを増して、もう両腕じゃ抱えきれないほどになっていた。
「やめっ…静くんっ!」
キスをする度、繋がる度、僕の中は君で満たされていく。
「んあっ、やぁ…っ」
日を追うごとに美しさを増した君は、一瞬の隙を見てこんなダメな男から逃げるんじゃないか、そんな恐怖と比例しながら。
「みる…っ」
一際深く突き上げると限界とばかり倒れ込む。君の上に、消えたりしないようしっかり抱きしめて。
「…もう、無茶ばっかりするの、やめて下さい」
荒い呼吸の合間、抗議の声を上げた彼女が少し伸びた髪を引く。
その尖らせた唇が可愛くて派手な音をさせキスを落とすと、仕方ないだろと微笑んだ。
「みるが僕を誘うから、どこででも欲しくなるんだ。これほど君に溺れていなければ、押さえることができるかも知れないけど、ね」
「…それは嘘ですね」
ああ、なんたることか。一世一代の告白をそんな簡単に流すなんて。
だけど僕は…いや、男は所詮プライドの高さが勝負の生き物。
「ふふ、厳しいね、相変わらず」
曖昧に誤魔化して、また胸の内を吐露する機会を失うのだ。
「静くんなんて…いっつも本当のとこ見せてくれないんだから」
ひねくれ者の自分というのは、自業自得だけどもてあますね。


NOVEL

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