12.「私もうれしい」ボタン&純太



「もう放して」
「やだよ」
無情に過ぎる時間と、ワガママの過ぎる腕。
どちらにも囚われたまま、私はどこにも行けない。
先生は、バカだ。バカすぎて呆れて、嬉しくて満たされた。
我慢してた分押さえが効かないと掠れ声で囁いた後、目眩するほどの快感と逃げ出したくなるほどの激痛を等しく与えて翻弄して、まだ解放する気がないんだから。
私よりずっと大人なくせに、どうして理性が働かないの?
身勝手なまでに求められる幸せが、あるなんて初めて知ったわ。
相反する感情の板挟みで、意味もなく笑い出したい気分なんだから。
「…遅くなると、お父さんに怒られる」
「放任主義だって、言ってたろ?」
「お、伯父さんがうるさいの、お兄ちゃんも!」
「わかったわかった、喜んで責任取らせて頂きますって婚姻届持ってくからさ」
「そういう問題じゃ、ない!」
なんなの、どうして真面目に話を聞いてくれないの?!
やっとの思いで起こした半身を、軽々とベッドに引き戻すのやめて!
「本能だけじゃなく、理性も働かせてみたらどう?!」
素肌むき出しの肩に熱いキスを落とす人間に、聞こえるのかどうか怪しいけれどあがいたって悪くないはず。
首筋を撫でる髪を乱暴に押し戻しながら、睨むとそこには予想通りの人の悪い笑みが。
「そりゃ無理だ。一生分使っちまったから、品切れしてんよ」
片方だけ上がった唇で頬に額に口付けて、ふと真顔をして先生は言う。
「なあ、裸で抱き合うのって、なんか嬉しくね?」
理由なんて分からないけど、それは確かに。
そしてまた、丸め込まれちゃうんだから、困りもの。



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