6.嘘つきな弟。      
 
 
           「もう、口きかない」
 
           回された腕を振り払うと、私は背を向けた。
 
           「…ごめん。反省してるから許して」
 
           追いすがった指が素肌を撫でて、その刺激に体が跳ねる。
 
           嘘ばっかり、声が笑ってる。
 
           「欲しいモノを我慢できるほど、僕は大人じゃないんだ」
 
           引き戻した体にキスの雨を降らせながら、嘘つきな弟は再び私を組み敷いた。
 
           「ねえ、好きだって言って」
 
           抵抗を封じ込めて、指先を泳がせた悟の嬉しそうな声。
 
           そうじゃないでしょ、順番が違うでしょ。
 
           「私が言うんじゃない、悟が言うのよ」
 
           乱れた前髪の隙間から、気怠い瞳を覗かせた男と目が合う。
 
           ああ、知らない顔だ。知らない腕だ。
 
           7年一緒に暮らして、初めて知った家族じゃない悟。
 
           口角を微かに上げた彼は、髪を掻き上げて剥き出しにした耳朶を噛み、囁いた。
 
           「好きだよ、圭。君だけがずっと好き」
 
           ベルベットの声が一つ、戒めを解いて、全身を支配する怯えが消える。
 
           よかった、体を奪うための言葉じゃなくて。想ってたから、悟も好きだと言ったんだ。
 
           行為に酔った声じゃ、にわかには信じがたい。
 
           甘く重い声じゃなきゃ、心には響かない。
 
           「ね、顔見せて」
 
           首筋に逃げる頬を、無理矢理引き寄せれば朱に染まった頬が可愛かった。
 
           「恥ずかしいんだよ、照れるのは女の子だけじゃない」
 
           ぼそりと呟くと、手のひらに胸を包み込む。
 
           「あっ…」
 
           ぬるりと頂きを捕らえた舌に、きつく目を閉じ唇を噛んだ。
 
           イヤな誤魔化し方。それ以上の追求ができなように、体を支配するなんて。
 
           足に、下腹部に、するすると移動する手と顔は留めようもなくワガママで。
 
           「圭の番だ…好きだって言って…」
 
           掠れ声に答えたくても、声にならない。
 
           聞きたいなら、その手を止めて。
 
           「言ってくれなきゃ、もっとひどいコトするから…」
 
           猶予なんて与えないくせに、下肢を嬲る舌の動きは返答なんて期待してないくせに。
 
           嘘つき。
 
           「んぁ…や…!」
 
           一際高く上がった嬌声に、意地悪な微笑みを浮かべた悟は言うのだ。
 
           「もういいよ、体に聞くから」
 
           それが望みなんでしょ?
 
           初めからそれ以外の答えなんて許さないくせに。
 
           2度目は幸せの快楽のウチにある。
 
 
 
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                     やっとハッピーライフ。         
                     そう?ハッピーなのは悟だけ?            
 
 
 
 
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