1.「生まれたときから」 アスカ&青
 
 
       あなたに会うために私の運命は動いてた、そんな気がするの。
 
       両親に捨てられたのも、お母さんが結婚したのも、全部布石で。
 
       「アスカ」
 
       「なぁに?」
 
       見上げた先でちょっと笑った彼は、唇に軽いキスを落とした。
 
       「…お父さんに、怒られるんだから」
 
       柔らかな刺激は舞い上がるほど嬉しいの。でもね、ちょっと物足りなくもある。
 
       あーちゃんのキスは触れるだけ、決してそこから先に進んだりしない。
 
       だから、頬を膨らませていじわるな脅しをかけて、大人な恋人を窺った。
 
       「アスカの勉強を見てるだけで、充分怒られてるよ。キスの一つももらわなきゃ、割に合わ
 
        ないだろ?」
 
       そのキスが足りないのに、どうして気づいてくれないの?
 
       「ほら、この問題、やって?」
 
       …なによね、自分が中断させたくせに、調子がいいんだから。
 
       どうしたって埋まらない11年に腹を立てても仕方ないけど、じれた私は乱暴にノートを閉
 
       じて、ネクタイで彼を引き寄せた。
 
       至近距離の鼻先に、掠めるキスを投げて。
 
       「子供と恋を始めたの、あーちゃんでしょ?それなら教えるのもあーちゃんの仕事なんだか
 
        ら」
 
       「ご機嫌斜めだね、お姫様。なにが知りたいの?数学?古典?」
 
       意地悪く笑うのは、きっと気づいているから。
 
       私の知りたいことわかってるくせに、口にするまで絶対教えてくれないんだから、もう。
 
       並んで座った膝に馬乗りになって、だからキスをせがむ。
 
       「触れるだけじゃない、深いキス、ちょうだい?」
 
       首を傾げてお願いして、断られたことあったかしら?
 
       優しく髪を撫でる指が頬を捉えて、羽根のように触れた後襲う、嵐。
 
       他人と器官を繋げたのはこれが初めて。目眩がするようで、甘いようで。
 
       舌が舌を追って、逃げて、絡んで。
 
       「んんっ」
 
       息苦しくて押し返した胸板が揶揄する響きで揺れると、吹き込まれる呟き。
 
       「ダメだろ、逃げちゃ。半分もわかってないのに」
 
       …年上を、舐めちゃいけないわ。
 
       容赦ない恋人は、手強いのよ。
 
       星野アスカ、13歳。初めてキスを知った夜。
 
 
 
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