赤ずきんちゃん(なわけです、たぶん…)
 
        メインキャスト
           赤ずきんちゃん …早希
           狼       …近衛氏(爆)
           猟師      …森山(先輩)
 
 
 
         ある日、こじれまくった姑との関係改善に、体よく利用されかり出された赤ずきんちゃんは、
 
         くそ重たいワインと空腹にはたまらない焼きたてパンを片手に森の小道を歩いておりました。
 
         「…ったく、都合が悪くなるとすぐ泣き落としに走るんだから、あの人は…。この極上天気に
 
          うら若い乙女がお使いってどうよ?」
 
         なんて悪態つきながらも、上手く逃げた姉とは違いバカ正直に言いつけを守っちゃう単純さ。
 
         己が利用されやすい人間であるとは、少しも気づいていないんでしょうね…。
 
         「挙げ句に『ぜーったい寄り道しちゃダメよ?森には危険な狼さんがいるんだから』って、わ
 
          かってるなら可愛い娘を宅配便代わりにするんじゃない!いい年して道草くうわけないでし
 
          ょ?」
 
         ねえ、と誰とはなしに同意を求めたその先にいたのは可愛らしい野ウサギさんで、目を輝かせ
 
         た彼女が次に取った行動と来たら。
 
         「…ぷりてぃ…さ、触りたい…」
 
         かくして、一目散に草むらに逃げ込んだ小動物を追っかけ始めた赤ずきんちゃんは、見事盛大
 
         な道草をくうハメになったわけです。
 
         「ホント、お馬鹿だね君は」
 
         気付けば薄暗い森の奧、途方に暮れる少女の前に悪魔な狼が一匹。
 
         「う、うるさいわね!ちょっと道に迷っただけでしょ?すぐに…」
 
         「帰れるって?そう、それなら遠慮せずどうぞ?」
 
         にこやかに促されたって…。
 
         四方八方見渡す限り、木、木、木。自分がどこから来たのかさえわからないこの状況。
 
         「えーと…あたしどっちから来たっけ?」
 
         「さあ?」
 
         「いじわるしないでさ、ヒントちょうだい、ヒント、ヒント〜」
 
         「教えたら面白くないでしょ」
 
         「そう言う問題か!乙女が困ってんのよ?紳士ならすぱっときぱっと教えなさいよ」
 
         「残念ながら、僕は今狼なんだ。折り目正しく生きる必要はないと思わない?本能のおもむく
 
          ままいくのも悪くない」
 
         「365日、本能だけで生活してるでしょ!」
 
         ゼイゼイ、ゼイゼイ。
 
         シュチエーションが変わろうと、絶対的な力関係に変化が見られるはずもなく。
 
         無駄な体力使った赤ずきんちゃんは、性悪狼に助けを求めるという愚かな行動にさっさと見限
 
         りをつけ、適当な獣道に踏み出しました。
 
         「どこ行くの?」
 
         「帰るの!」
 
         「へえ、そっちには冬眠前でお腹を空かせたグリズリーが群れをなしてるけど?」
 
         …今頃教えるんだ、必死に頼んでる時は見向きもしなかったくせに…。
 
         「じゃ、こっち」
 
         「ああ、さっき山賊が良からぬ相談を…」
 
         「…っ!こっちは!」
 
         「狼が餌を今か今かと待ちかまえて…」
 
         「アンタも狼でしょ!!!」
 
         ああ、もうっ!
 
         ところ構わずわめき散らしたい彼女の心を知ってか知らずか、ニヤリと唇を歪めた狼はひょい
 
         っと小さな体を抱き上げて、ねぐらにしている洞窟に一直線。
 
         「待て待て待て、またんかい!」
 
         「何?」
 
         「どこ連れてく気よ」
 
         「愛の巣」
 
         「やめろ、その卑猥な表現!!」
 
         どこまでも平行線、あくまでかみ合わない会話、一体この騒動に終止符を打てるものなど、存
 
         在するのでしょうか。
 
         「はいはーい、そこまで。未成年者略取で射殺すんぜ?」
 
         「おや、猟師くん」
 
         「また出たよ…更に混乱を招く人間が」
 
         既にきっちり猟銃を構えた猟師が、下草を踏みしめ楽しげに2人に向かって歩いてきます。
 
         「獣の分際で可愛いお嬢ちゃんに手を出しちゃダメだろ?特にそいつは俺が狙ってたんだから
 
          さ」
 
         「先に手を出したものの勝ちって、昔から決まってるんだよ」
 
         「種族越えんのはまずいだろ」
 
         「細かいことを気にしてたら、人生楽しくないでしょ」
 
         空気も凍るやり取りに、ため息を禁じ得ない赤ずきんちゃんなのでした。
 
         「どーでもいいけどあたし、おばあちゃんとこ行かなきゃなんないの。漫才は2人だけでやっ
 
          てくれる?」
 
         最早収拾もつかないこの事態、願うのは一刻も早い解放です。
 
         しかし、振り向いた狼と猟師は彼女の気持ちなど微塵もくんではくれませんでした。
 
         「少しだけいい子にしてて?すぐ終わるから」
 
         「安心しろよ、こいつとカタつけたら送ってやるから」
 
         それは、いつ?
 
         果てしなく続く舌戦に巻き込まれ、そこはかとない虚しさを噛みしめる少女なのでした。
 
 
 
         教訓、好奇心は身を滅ぼす。大人の言いつけは守った方がいいかもしんない。
 
   
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